昨日、アップしていくか迷っていたSSですが、やはり少しずつアップさせていただこうかと思います。
正直、まだ、絵の創作まで手が回らないことと、
せっかく書いたお話だから、少しでも日の目に当ててあげたいな…と思いまして。
なので、ブログ連載にさせていただく事にいたしました。
●作中には、ネタバレを多く含みます。ご注意ください。
●氷室×主人公ちゃんが苦手な方もご注意ください。
●主人公ちゃんの名前は 名城 苓緒(なしろ れお)
●氷室視点で、ときメモGSにできるだけ沿いつつ、オリジナル絡めて進めて行きたいと思っております。
雲間はてきとー人間なので、あんまり原作との照合はしないです。
台詞とか気になる方は、ご容赦お願いいたします。
以上の事に、お気をつけください。
氷室先生が書いてるので、タイトルはレポートチックに「無題ドキュメント」
その第1話「四月」です。
それではどうぞ^^
「4月」
入学式の3日前、学園の桜は満開を迎えた。
今はもう、ちらほらと花弁が散り始めている。
私にとっては、桜が咲いたとて珍しいこともない。
毎年、同じ春が巡るだけだ。
卒業生を送り出した空間に、新入生を迎えるだけのこと。
そう、思っていた。
私には物珍しくもない桜であるが、新入生にとっては感動を覚える物であるらしい。
学園が建つ前からそこにある桜は、確かに荘厳な雰囲気を漂わせている。
その桜に魅せられ、記念写真などを撮り合っている生徒達。
毎年の光景に、私は軽くこめかみを押さえる。
彼らを入学式会場へ促すため、私は校庭へ向かう。
彼らの行動のおかげで式が遅れることは、全体のスケジュールに遅れが出る。
私は教師の立場から、そういったことを注意せねばならない。
式の開始まで、あと10分。
急がねば…そう思ったときだった。
「氷室先生」
声のする方を見ると、「ご入学」と書かれた赤と白の花形リボンをつけた女子生徒がいた。
「有沢。君は今回の総代表だろう。どうした?」
有沢志穂。
中等部の頃より、数学に関する質問などで交流がある生徒。
彼女の勉学に対する意欲には大変感心している。
「そうなんです。これからすぐ打ち合わせに行かなくては…
でも私の幼馴染が見当たらなくて…捜しに来たんです。」
「幼馴染?」
「ええ。でも外部入学生なんです。
幼い頃はこちらに住んでいたんですが、小・中学校は別の学校に…
高等部は初めてなので、私が案内しようと思ったんですが…
…その、彼女は方向音痴なもので…。」
外部入学生と聞いて、一人の生徒に思い当たった。というか外部生は一人しかいない。
「有沢。その役引き受けよう。君は会場へ急ぎなさい」
「でも……」
「大丈夫だ。名簿を見たので、顔と名前はわかる。安心しなさい。彼女は私の生徒だ。」
彼女はこの春から氷室学級に入る生徒の一人だった。
屋外に出ていた新入生を会場へと促し、私は一望した。
有沢に頼まれた外部生が見当たらない。
学内の、新入生が行きそうなところはほぼ見回ったはずだと思い返し、一箇所、思い至った。
学園裏の教会。あそこにも確か桜が咲いていた。
だがしかし、流石にあんなにも奥まで迷い込むものだろうかと思ったが、有沢の「方向音痴」という発言を思い出した。
私は慌てて、踵を返す。
教会の隣には、学内で一番の老樹桜がそびえている。
学園裏の教会の噂はよく囁かれているが、その噂ゆえ近づかない生徒も多く、老樹の存在はあまり知られていない。
私自身、用もないので近づいたことはない。
在学時から数えればもう何年となるのに、初めて踏み入れることになるとは…
そんな事を考えていたとき、突然強い風が吹いた。
ザアァァ…
満開を終えた老樹から、多くの花弁が舞い、あたりを一瞬桜色に染めた。
風が収まっても尚、花弁は降り注ぐ。
その先を、目を凝らして見つめた。
一心に、教会を見つめている少女。
赤みを帯びた髪を、肩で切りそろえ、
胸には赤と白の花形リボンをつけている。
「名城…苓緒。」
名城は、こちらを振り返る。
驚いた表情を見ると、本当に古い教会に見入っていたらしい。
「何をしている。君は新入生だろう。入学式の会場はこことは正反対だ。」
大分収まった花弁の中、名城は私の姿を見とめ、一瞬微笑んだ。
「あ…もしかして先生ですか。よかった…あの…」
迷った事はわかっている、案内しよう、と言いかけた私に、名城は想定外な発言をした。
「先生。あの教会の軒下に小鳥の巣があるんです。
なんて言う鳥か、ご存知ありませんか…?」
……鳥?
この子は、自分の入学式よりも、鳥の種類を気にしているのか?
だがしかし、今議論している場合ではない。
「今日何度も見かけたので、なんだか気になっちゃって…きっとよい名前がついているに違いないと思うんです…!」
「その話は、また後、だ。今は何時かわかっているのか。」
「え…ああっ!入学式!私迷っちゃって………ここどこでしょう…?」
「…名城。急ぎなさい。私が案内する。」
「はい……あれ?なんで名前知ってるんですか?」
名城は、今更になってそんな質問をする。
思慮深いのか鈍いのかわからない子だ…
「最初のホームルームで、その答えは出る。
だから今は、式の事だけ考えていればよい。」
そういって、私は振り返らずに歩き出す。
名城は、腑に落ちない様子で後ろを付いてきた。
会場へ急ぎながら、後方の少女を見やる。
この子には手を焼きそうだ。
そんな事を考えていた。
*****
という訳で、第1話でした。
私の中の氷室先生はこんな感じです。
とりあえず出会わなきゃ始まんねぇ!て感じで、一所懸命出会わせましたw
これから氷室先生はもちろん、主人公ちゃんの可愛さも描いていけたらなーと思います。
この記事にトラックバックする